季刊「銀花」について
文:青戸美代子・あおとみよこ (季刊「銀花」最後の編集長) [最終号となった第161号の表紙] ● 季刊「銀花」は、一九七〇年に創刊されました。 その編集後記には、「どの記事も全部むだで、全部役立つ雑誌を作りたい。 そして型破りの雑誌を作りたい」と記しています。 ファッションを主にした婦人雑誌を、多く刊行している文化出版局にあって、 性差も年齢も超えて、心豊かな人生を送りたいと願う人々に楽しんでいただく雑誌を、目指したのです。 ● 心豊かな人生とは、一様ではありません。 美術や工芸品に親しむ方もいれば、文学や書の世界に心を遊ばせる人もいます。 各地を旅し、その土地ならではの美味に舌鼓を打つこともあれば、 名所旧跡とは異なる、その土地の歴史や風土に触れたいと願う人もいることでしょう。 この雑誌が、さまざまな趣味の真剣な三昧境に遊ぶことの一助になればと願って、編集を続けました。 ● 私たちは、歳月に磨かれた美しい手仕事や美術品を求め、 風土に根ざす人々の暮らしを訪ねて、 日本各地を、時にはアジアにまで足をのばして歩きました。 何より、誇りを胸にしてひたむきに生きる人々に直に向き合い、 その息づかいを誌面に反映させたいと願いました。 ● 自然が織りなす美しい光景や、厳しい自然の摂理を描き出すような写真を積極的に掲載もしました。 そこには、純粋な感動と共に、“エコ”などという流行語に躍らされることのない、 学ぶべき人間の生き方が透けて見えるからです。 ● 「銀花」は、“人間の手”の復権を謳った雑誌です。 そして、人間そのものが持つ、計り知れない底力を表現したいと考えて編集してきました。 「こんな日本人がいるのだ」「こんな日本がある」ということを、美しい写真と意を尽くした文章で表現し、構成する。 インターネット全盛の時代にあって、雑誌という媒体でこそそれが生かされると信じて歩を進めてきました。 ● 創刊41年目を迎えた矢先の“休刊”は、誠に残念でなりませんが、ある作家がこんな風に表現してくれました。 「『銀花号』という船が大航海を終えて母港に帰港するのです。 各地で様々な人々に出会い、お金では得られない宝物を満載しての旅でした。 途中で座礁することなく、無事に帰港できたことは、この時代にあって希有で誠に幸せなことでした」と。 私たちも、静かにその帆を下ろしたいと思っています。 季刊「銀花」の表紙と背表紙を一冊にまとめた特装版 ~表紙デザイン=杉浦康平 写真=小林庸浩~
by hazukihallhouse
| 2010-04-12 12:00
| *展覧会のごあんない
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